市民から文化力ホームページ - Interview聴いて、Cool! -

img08.png


cool-top.jpg

NPO法人
日本グッド・トイ委員会 理事長 
東京おもちゃ美術館 
館長 多田千尋さん 



 東京都新宿区。区立四谷第四小学校の元校舎に、中野のビルの一角にあったおもちゃ美術館(NPO法人日本グッドトイ委員会運営)が、2008年5月、「東京おもちゃ美術館」となって移転してきた。23年間の活動実績にもとづく展示や収蔵品にあわせ、これまでの十数倍以上になる展示や遊びの空間ができあがり、新しい活動がスタートしたのである。その新たな動きの大切な役割を担っているのが、赤いエプロンをした約200名の「おもちゃ学芸員」というボランティアたちである。この仕組みを発案し、取り入れた館長の多田千尋さんに、話しを聴いてみよう。

おもちゃ研究から「おもちゃ美術館」、そして「東京おもちゃ美術館」へ 


 そもそも、おもちゃ美術館は父が始めた活動でした。美術教育の専門家だった父は、全国の幼稚園や学校の図工の先生たちに美術教育を指導する、芸術教育研究所を主宰していたのですが、その父があるときヨーロッパに行って、子どもたちが使っているおもちゃのすばらしさに感動して帰ってくるのです。「子どもが最初に接するアートは、おもちゃではないか。だとしたら、それをもっと研究しなければならない」となり、おもちゃ研究が研究所のテーマの一つに加えられたのです。そこで、良質のおもちゃを選定し、広める日本グッドトイ委員会をつくり、おもちゃ美術館も併設し、活動を広げていきました。
  約20年間、中野にあるビルで展開してきましたが、手狭になってどうしようもなくなり、方策を考えていたところに、今回、廃校になる小学校の話をいただき、さまざまな検討の結果、移転して新たなスタートを切ることになったのです。

大切なのはおもちゃとの架け橋になる「おもちゃ学芸員」 


 展示スペースに替えていくための資金的な課題も大きかったですが、それはいろいろな出会いも重なって、何とか目途がつきそうになりました。しかし、もう一つ大切なことがあったのです。
 それは、人材です。私たちが目指そうとする「ヒューマン・トイ・ミュージアム」を作ろうとすると、多くの人が必要なのです。来館者とおもちゃとの架け橋になるようなホスピタリティーあふれる人が。ニコニコして遊びのエッセンスを教えてくれたり、「お疲れでしょ」とお母さんにかわって赤ちゃんを抱っこしてあげられるような、そんな人たちです。そうでなければ、つまらない美術館になってしまう。平日でも10人ほしかった。
  それで、オープン半年前から、いろいろと人を集める方法考えました。ただ単に「ボランティア募集」なんて貼り紙をしても、人が集まらないだろうと予想できました。
 その結果、日本グッドトイ委員会で行っている「おもちゃコンサルタント養成講座」と同じように、お金を払ってまで勉強したいという「おもちゃ学芸員養成講座」の受講生を募集することにしました。すると多くの応募がありまして、25名定員の講座を7回も催すことになったのです。真剣に学んで、美術館でボランティアをしたいという方が集まってくれたのです。思わぬ数の受講生だったので、受講料自体を財源にし、新たに木のおもちゃも買いました。みなさん、とても喜んでくれています。
  今、約200 人の「おもちゃ学芸員」がいます。10代から80代までで、週3回活動する人もいれば、月1回の方もいます。また、この方たちはNPO法人の会員にもなってくれました。


豊かな学びの場と誇りを 

 私は、こういった多くの真剣にまじめにやってくださる「おもちゃ学芸員」の方々の期待に応えられるような展開を考えていますが、それは大きく2つあります。1つは、「豊かな学びの場」と提供することです。楽しい講座、一流の講師を呼んでのワークショップなどをどんどん提供することです。2つには、「誇り」をもってもらおうということです。自分のミュージアムのように思ってもらい、そこを誇らしげに友人や知人に話せるとかです。実際に、「感謝ウィーク」という、おもちゃ学芸員の方の知人友人だれでもいいので一定の期間を入館料無料という仕組みを設けました。すると、ある方は同窓会みたいにみんなを誘ってきて、まるで自分のミュージアムのように案内していました。「あなたいいところで働いているわね」などと声かけられたりして、それがとても誇らしげに見え、私も嬉しくなりました。こういうことが大切だと思います。
 それから、私のテーマは「民が担う、公」なんです。父がこだわっていた「在野の精神」でもあります。この小学校の校舎も昭和10年に住民たちが寄付金を集めて建てたものなんです。鉄筋コンクリートの4階建て。当時は、木造の家がほとんどですから、そびえ立っていたといいます。民が建てたから、民がこだわって、校舎の存続運動が住民たちの間で盛り上がったのだと思います。だから、市民が動くということは持続可能な文化づくりなのかもしれないと実感しています。

<プロフィール>
cool_3.jpg

多田 千尋(ただ ちひろ)

芸術教育研究所所長/東京おもちゃ美術館館長
1961年東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、モスクワ大学系属プーシキン大学に留学し、幼児教育、児童文化、おもちゃなどを学ぶ。20年にわたり、おもちゃコンサルタントを3,500人養成し、高齢者福祉施設におけるQOL・ADLの向上を目指す「アクティビティディレクター」を全国に300名養成するなど、乳幼児から高齢者までの遊び文化・芸術文化および世代間交流の研究と実践に取り組んでいる。
2008年春、東京・新宿に日本を代表するトイミュージアム『東京おもちゃ美術館』を開設。自立するNPOミュージアムとして、国内外の注目を浴びている。また、日本のおもちゃ職人100人の玩具を集めたギャラリーショップ「Apty」は「木育」を推進する全国の幼児教育・子育て関係者から強い関心を集めている。『遊びが育てる世代間交流』(黎明書房)など著書多数。早稲田大学講師。

cool_3_2.jpg