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NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)代表、 
フェスティバル/トーキョー実行委員会事務局長 蓮池奈緒子さん 



 2000年4月に設立され、今、日本で最大のアートNPOといわれるようになったNPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)。※1東京国際芸術祭を開催してきた実績から、2004年には東京豊島区の旧朝日中学校を利用した「にしすがも創造舎」(「NPO法人芸術家と子どもたち」と協働)を豊島区と協働事業として立ち上げアートスペースを運営しはじめた。現在では複数の文化施設の指定管理者などを受託し、フェスティバル/トーキョーの事務局を担うなど、その活躍は多くのNPOに勇気を与えてくれる。
代表の蓮池奈緒子さんに、「聞いて、cool!」。


--NPO法人アートネットワーク・ジャパン(以下、「ANJ」)の活動がどんどん広がっているのですが、その内容をお聞きする前に、蓮池さんのことに興味津々の方もおいでなので、そこからお伺いしたいのですが。


 中学、高校のころから演劇に興味をもっていました。大学で何が学べるのかは漠然としていましたが、とにかく演劇に興味があったので、明治大学文学部演劇学専攻に進みました。そのころは、アート・マネジメントという言葉すらありませんでしたから。とはいえ、学生時代はご多分にもれず映画を撮ったり芝居をやったり…。就職活動もいっさいしてなかったですが、ちょうど老舗の劇団である文学座が制作部門の社員を募集しているとわかって、軽い気持ちで受け、入ることになりました。演出をやれるような才能も技術もないし、役者にも向いてないことがよくわかりましたので(笑)。文学座では、チケット販売や会員組織の雑務をしながら、受付をしたり、あいまに稽古を見たりとなんとなく演劇に携わって仕事を始めたという感じです。  その後、東京グローブ座に勤めましたが、出産のために辞め、子どもが小さかった3年半くらいはまったく仕事についていませんでした。たまたま、東京都が主催する「東京演劇フェア」事務局のお手伝いしたのが、きっかけですね。とはいっても、最初はアルバイト的にやっていました。

  • ※1 東京国際芸術祭(TIF)は、1988年に「東京国際演劇祭’88池袋」としてはじまり、「東京国際舞台芸術フェスティバル」と名前を変えながら、97年まで、ほぼ隔年で開催されていった。99年から毎年開催へと変わったことを契機に、NPO法人化が検討され、2000年3月NPO法人となった。同年4月に特定非営利活動法人アートネットワーク・ジャパンが正式に設立された。それ以前は、そのたびに実行委員会が結成され事務局が組織・運営していたが、継続的な事務局運営可能になったのである。


 実行委員会がNPO法人になったときから職員になり、10年が経ちました。最初は事務局員7人でしたが、あれよあれよという間に、22人になってしまいました。それもここ4年半くらいのことです。  いずれも地元の財団やNPO法人と組んで行っているのですが、指定管理者としては大倉山記念館(設置者:横浜市、2006年4月〜10年度末)、川崎市アートセンター(設置者:川崎市、2007年10月〜11年度末)、業務受託としては新百合21ホール、急な坂スタジオの管理運営を行っています。それぞれにスタッフを置きますし、ここ「にしすがも創造舎」の事業や東京都と豊島区とANJで開催するフェスティバル/トーキョーなど事業が拡大してきましたので。

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——なぜ、指定管理者に応募するようになったのですか。


 一つは、「にしすがも創造舎」を運営していくなかで、活動の拠点をもつことによる事業の広がりを実感したことと、さらに拠点を持ちながらクリエイションすることを経営面で安定させるには、3〜5年の管理料が保障される指定管理者になることは経済面、スタッフの人材育成の面からも有効だと考えたからです。ANJ の企画力を理解していただいて、いろいろな方面から問い合わせも多いです。もちろん、多くの課題もありますが、いろいろな事業に波及することが期待できます。


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——そうですね。では、話を「にしすがも創造舎」の活動にもどしましょう。


 ここは、廃校だった旧朝日中学校をANJとNPO法人芸術家と子どもたちという2つのNPO法人が、※2豊島区と契約して、それぞれが稽古場運営事業、こどもアーツセンター事業を行っています。その経緯は?  きっかけは、東京の舞台芸術のアーティストたちの稽古場環境がよくないと知ったことでした。東京では、稽古場探しに忙しくなかなかクリエーションに力が注げない小さな劇団が多いのです。地方の劇団は集客が少ないなどの課題もありますが、稽古場については豊かなところが多いです。そこをなんとか応援できないかと思いました。  そんなとき、東京では廃校が多いらしいと聞き、2001年の春、自分で「廃校プロジェクト」と名付け、ひとりでリサーチを始めました。当時は、廃校利用についての部署もなく、どこに相談したらいいのもわからずの手探り状態でしたが、次々に電話をして、企画書をみてもらい接触していくうちに、やっと旧赤坂小学校(港区)や旧千川小学校(豊島区)を試験的に2年ほど使うことができました。けっこう、そこでも稽古場として利用できるように設備を整えるなど投資があったのですが、そのなかでアーティストや私たちが行政と協働し、地域の人たちとの活動していくことに、いい感触をいだいていくようになりました。

  • ※2 豊島区との協働は、2003年9月に区がNPOとの協働事業の提案募集に応募したことから始まった。文化デザイン課の「文化芸術創造支援事業」として、旧朝日中学校がその拠点となり、2つのNPOの提案が取り上げられたのである。  2004年8月、豊島区と協定書と契約を交わし、活動が始まった。そして、ANJでは、稽古場利用を本格的に展開するため、旧体育館を劇場化するための空調設備工事等を計画した。そうして、NPO法人としては初めて、日本政策投資銀行と地元の巣鴨信用金庫から3000 万円の融資が決定されたのである。

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——NPO法人で3000万円の融資を受けようという発想が、すごいですね。


 先行投資は、企業でもNPOでも小さな場合は難しいですが、旧体育館に空調をいれることで結果的に貸出期間が増え、稼働する時間が増えたわけです。思い切った先行投資をし、改修したことで、認知度も上がり、収入に結びついていきました。現・会長の市村作知雄は「劇場を一つ建てようと思ったら、何億もかかる。逆にいえば4000万で劇場がもてたということだ」と話していましたが、発想の転換と攻めの戦略は、振りかえるとすごいと尊敬します。  普段は、大きな稽古場を必要とするわいあい大きなカンパニーの稽古場として使ってもらい、フェスティバルのときと「アート夏まつり」の約3ヶ月期間だけ、劇場となります。  今、思うとトップの市村に先見の明があったんですね。思いっきりがいい。NPOとしては初めて政府系の銀行から融資を受け、新聞にも大きく出ました。8ヶ月くらいかかっての結果でしたから、こちらもヘトヘトになりましたが、銀行の担当者さんも本当に真剣にていねいに対応していただき、期待されていることがわかりました。おかげさまで、毎月の返済はきちんとしてきて、完済に近づいています。  体育館のほか、いっぺんに貸し出せる稽古場が4つ、最大で6つあって、半年に1回公募をし、審査をして使っていただいています。こちらも、ほぼ100%の稼働率です。

——ワークショップ読み聞かせ実践講座や「カモ・カフェ」など、地域の人たちとの取り組みも根づいてきていますね。


 ANJが一緒に創作活動をしたいと思うアーティストに「にしすがも創造舎」と「急な坂スタジオ」内に専用稽古場を提供し、よりよい作品制作をサポートする「人材育成プロジェクト」を行っています。今、3人の演出家と1人の振付家がいて、安定した創作の場でじっくり作品づくりを行ってもらっています。制作面、資金面のサポートをしながら、ANJが主催する東京国際芸術祭への参加や「にしすがも創造舎」で行う地域の方を交えてのワークショップを開催しているのですが、なかでも読み聞かせ実践講座「心に響くドラマリーディング」は好評です。プロの演出家や俳優が区民対象に読み方を連続講座で教えていくものなので、ひと味違い、楽しいと人気があります。講座を受けた方々が地域に出向いて読み聞かせをするなど広がっています。  カモ・カフェは、2008年10月に本格的に営業を始めた気軽な飲食店です。「創造=稽古場」、「発信=劇場」が整いましたので、次のステップとして「交流」の場が必要と感じ、それまで期間限定でオープンしていたカフェを常設にしました。地域の方も、稽古場を利用している人もここで気軽にコミュニケーションできます。

——そういうなか、豊島区は平成20年度文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)を受け、その受賞理由のトップに「にしすがも創造舎」の名があげられました。


 ビックリしました。ここは協働事業の一環で、そういう意味では地域に貢献しているかなと思います(笑)。行政と民間の協働ということを机上の空論にしないためには、民間も考えていかなければならないし、こうやって良好な関係ができてきたので実践を重ねていきたいと思います。ただ、現在は、暫定活用の一環ですので、将来をどう見すえていくかというのは、課題です。  私自身の仕事も、ここ2、3年は、経営のことを考える時間が多くなりました。6年ほど前、「NPOも運営ではなくて、経営なんだ」といわれて、そのころはまったくそういう意識がなかったのですが、たしかに、今やっている仕事は経営に近いなあと思いますね。  お手本がないので、いつも手探りです。もちろん、やりがいはあります。

——ありがとうございました。。


<プロフィール>
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蓮池 奈緒子(はすいけ なおこ)

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)代表、フェスティバル/トーキョー実行委員会事務局長
文学座、東京グローブ座勤務を経て、1997年東京国際舞台芸術フェスティバル(02年より東京国際芸術祭)実行委員会事務局入局。2000年事務局のNPO化に伴いANJ職員となり03年より事務局長、08年より代表。01年「廃校プロジェクト」を開始し04年豊島区旧朝日中学校に豊島区文化芸術創造支援事業として「にしすがも創造舎」をオープン。05年~「にしすがも創造舎演劇上演プロジェクト」、07年~「にしすがもアート夏まつり」をプロデュース。区民向け「読み聞かせ講座」なども企画。明治大学文学部演劇学専攻卒。1962年横浜生まれ。